ボーカル&作曲で音楽を紡ぐ「まひこ」インタビュー「メトロの叫び」「やまと撫子」

  

今回のインタビュー・ゲストは”まひこ”さんです。「メトロの叫び」をなんとアカペラ4重奏(!)で歌っていただいた方です!

「メトロの叫び」で4パートを歌っていただいた”まひこ”さん

https://youtu.be/k9TgkNzQ1pU

メトロの叫び--Call of Metro; Music: Yumeji's Theme(花様年華) by Shigeru Umebayashi, Vocal: mahiko; Lyrics: MA 

まひこさんのオールアカペラで

  • ベース
  • テノール(サブコーラス)
  • アルト(サブコーラス)
  • メゾソプラノ(サブコーラス)
  • ソプラノ(メインコーラス)  

バランスの取れたアレンジはもとより、ボーカルそのものの雰囲気が非常にミステリアスかつ深みがあります。イメージしていた夜の都市の雰囲気にピッタリです。これは、どう考えてもまひこさんにしか成しえない作品です。心より感謝申し上げます。tokyocyabin

わたしにとって音楽は言葉

「メトロの叫び」の歌声がとても成熟した感じ(フルボディ)で素敵なのですが、実はまだ20歳そこそこと、非常にお若いのですね。幼少時からすでにピアノで作曲をなさっていたとのことで、音楽キャリアが長いです。いきなりですが、まひこさんにとって音楽とはなんでしょうか?

私にとっては言葉とほぼ等しい存在のような気がします。
人の言葉や文字の代わりに、ものを伝える手段が音になるイメージです。
音楽も、自分の思い浮かんでいる何かをアウトプットして伝えるという面では、小説などと似たような部類になるのかもしれないと思ったりしますが、ある意味言葉を構成するよりは音楽の方が多少便利だと私は感じます。
音楽は感情や場面の様子を、音を発すると同時に瞬時に伝えることが出来るからです。
怒っていれば、音を強く勢いよく出したりすればすぐ怒りが伝わるし、
数人のおばちゃん達がぺちゃくちゃと騒がしく井戸端会議をしている場面を表すのであれば、私ならバイオリンのピチカート奏法などでお喋りしているような旋律やちょっとお茶目なリズムを構想します。
音を奏でるだけでこんなに色んなことを伝えられるなんて、ご先祖さまは本当に良いものを発明してくれたなと思います。

シュトラウス, ヨハン 2世「ピチカート・ポルカ」

https://youtu.be/3CAXpuPqfv0

Johann and Joseph Strauss - Pizzicato-Polka (The New Years Celebration From Vienna, 2012)
1,087,034 回視聴•2012/01/08
George Enescu チャンネル登録者数 6280人
Johann and Joseph Strauss - Pizzicato-Polka (The New Years Celebration, 2012, Mariss Jansons, Vienna Philarmonic Orchestra)

楽しい音楽を聴くと心も楽しくなる、という真実。こういうの聴いて、暗くなれる人って…特殊精神の持ち主ですよね。

声という音を紡ぎ操る能力

パートリーダーをなさっていたとのことで、ボーカルやコーラス、ハーモニーへのアプローチについて。とくにわたしは、歌詞をとてもきれいに発音なさっていただいているのが強く印象にあります。例えば、「透明な言葉 氷で眠らせ」の部分、「透明」と「氷」が実にきれいだし、「言葉」の「ば」が「ヴァ」に近いソフトな感じで、Cotovaっていう風にラテン語っぽく聴こえて感じて非常に好きです。

ありがとうございます!!
歌詞の内容に合わせて、子音と母音の強弱や長さには注意を払っています。
合唱でもそういった点はかなり重視するので、もう身に付いてしまってるのかもしれません笑
広いホールの遠くにいるお客様にも、ちゃんと言葉やそのニュアンスが伝わらなければいけませんし、もし違う言葉に聞こえたらそれだけで伝わるものが違ってきてしまいます。
特にご指摘いただいた部分は発音にこだわった部分でした。
「透明な言葉」の「ば」は、溶けていくような透明感を表現するために、敢えて少し曖昧な発音にし、「ば」の母音を伸ばす際にトリル(コブシとも言える?)を入れました。
トリルは、メンデルスゾーンの「ベニスの舟歌」という曲があるのですが、その曲のクライマックスを連想して歌いました。「ベニスの舟歌」はピアノ曲ですが、曲名の通り、イタリア風の繊細な旋律が印象的で、非常に美しい響きのある曲です。
この細やかで憂いのある感じが、「メトロの叫び」のイメージにはぴったりだと思い、メンデルスさんからイメージを少しだけ拝借しました…笑

ちなみに、コーラスは、弦楽器のピチカートを連想させるために破裂音に近い子音を発して奏でていますが、破裂音はピッチが不安定になりがちなので、こういったコーラスは終始ピッチをコントロールすることに意識を集中させることがまず重要です。メインボーカルを引き立たせたり曲の雰囲気を作るパートなので、伴奏だからと言って油断出来ません。 

メンデルスゾーン/ベニスの舟歌~「無言歌集 第2巻」

https://youtu.be/pCIZgCYdM8M

メンデルスゾーン/ベニスの舟歌~「無言歌集 第2巻」より
404,393 回視聴•2010/04/01
ピティナ ピアノチャンネル PTNA チャンネル登録者数 9.83万人
「4期のピアノ名曲集 第4巻 ソナチネ程度」(Gakken)より
メンデルスゾーン/ベニスの舟歌~「無言歌集 第2巻」より Venezianishes Gondellied II Op.30-6 ■演奏:中川京子

 2:10にトリルが入ってます。様々な曲をご存じなので音楽的イメージ・プールが大きいのはまひこさんの大変な強み。

テベマググ氏の服が好き

パリコレでの曲を担当するのが夢と書かれていますが、ファッションショーの中でも、パリコレは特にプレゼンは斬新で面白いです。注目しているデザイナーがいらっしゃるのでしょうか?

最近はテベマググ氏の服が好きです。
アフリカの民族衣装などをベースにしていて、配色からカッティングまで、どの作品を見ていても飽きず、本当に素敵です!
やはりアフリカの民族衣装をベースにしているからでしょうかね?色々見ていると、ワイルドさや自然が感じられます。斬新でスタイリッシュだし、一見かっちりして見えるのに息苦しくなさそうで、個人的には見ているとなぜか爽やかな気持ちになるデザインが多いです。
少し独特ではあるけど自由な発想で、ちゃんと遊び心のある雰囲気も、私の作りたい音楽や世界観に重なるような気がします。

2019年LVMHプライズのグランプリを受賞したテベ・マググ(南ア)

https://youtu.be/K-64i_IgVpQ

Thebe Magugu | Fall Winter 2019/2020 Full Fashion Show | Exclusive
5,422 回視聴•2019/01/05
FF Channelチャンネル登録者数 136万人
2019年にアフリカ人として初めてLVMHプライズのグランプリを受賞したテベ・マググ。母国南アフリカに根ざした、サステイナブルな服作りが評価された。

「新型コロナ以前のような活動やシステムではファッション産業に未来はない。それは地球を汚す、人類全体の虐殺のようなもの。注意したいのは、サステイナブルを心がけるわれわれが頼る原材料やその生産者はすごく少ないということ。考えなしに搾取することは限られた資源を根絶やしにしてしまう。循環させるプロセスの管理には、生産者を保護するサステイナブルな仕組みをつくらなければならない」と、サステイナビリティの潮流にすがろうとする、新型コロナ後のファッション業界に警鐘を鳴らす。

「加えて、アフリカでは環境的な問題だけでなく、社会的なサステイナビリティも重要だと考えている。南アフリカでは新型コロナの感染拡大前で30%の失業率。人々の手助けも必要なんです」

 世の中はデジタルへと急速に移行しているが、ファッションでは“Phygital”(デジタルとフィジカルの造語)が表すように、ふたつの要素を掛け合わせたアプローチが主流になっていきそうだ。

おおお、まさに今最先端の注目デザイナーですね!(わたしは知りませんでした)。ここにきて「着ること」「装うこと」が「音楽を聴くこと」同様、その行為のある方そのものが大きく変わってきているさなか、デザイナーに求めれられるものも当然変わりつつあるのでしょう。

創作は出会いや刺激がトリガーとなる

作曲のインスピレーションはどこから受けるのでしょうか。曲想やアレンジが浮かぶ状況を教えてください。

急に降りてきたりもしますが、私が本能的に神秘的で素晴らしいと感じたり、面白味を感じたものを音楽にしたりもします。
自然の美しさを体感した時や、不思議な幾何学模様を見つけた時、面白い色彩の組み合わせを自分で発見した時も思い付きますし、少し変わった建築物を見た時なども面白いメロディーが思い付くことがあります。もちろん色んな人との関わりの中で思いつくものもあります。
そういうちょっと変わったものや刺激に対して反射的に創作している部分があるかもしれません。


ただ、アレンジや既成曲を編曲したりする時なんかは、そういう降りてくるようなインスピレーションとはまた少し違う気はします。
どうしても誰かにイメージを伝えたいあまり、凝りに凝って、感情を入れ込んでしまう時があります。
時間をかけ、こだわりにこだわって、やっと自分の想像している通りのものが出来上がった時の達成感は言うまでもありませんが、その代わり集中しすぎて精神的にも体力的にもかなり色々すり減ります笑
アレンジを考えて曲を磨いていく時間は、実際とても充実していますが、「あれは違う」「これもなんかイマイチ伝わってこない表現だな」とか、納得いかないループにはまっていくので、途中からはまるで修行をしているような感じになります笑

オリジナル部分へのヒラメキは外界の刺激から瞬間的に得ても、それを形にするためには構成力・表現力というテクニカルな能力の出番ということですね。たしかに、わたしも曲のアレンジをお願いして、まひこさんは良い意味で”凝り性”な方と感じました。ここをこうしたら、面白いのではないか?という追及をついついしてしまうのですね。ご本人はそれで”すり減って”しまうようですが…これは…音楽職人の性(さが)というものではないでしょうか?

 こひままひこ「やまと撫子」(オリジナル曲)

https://youtu.be/IGZMnUmWUiY

こひままひこ「やまと撫子」
2020/09/18

現在YouTubeチャンネルを拡張中のまひこさん。その仕事ぶりからも、着実な成長が予想できます。

創作料理を”実験”中

最近の「わたしのお気に入り」はなんでしょうか? 和みネタです。ww なんでも結構です。

音楽以外でも良いのでしょうか?笑
最近のお気に入りは創作料理です。
冷蔵庫の中にある限られた食材の中で、今まで食べたことのない何かを作るというミッションを作ったりして楽しんでいます。半分実験です。で、実験によって出来上がった料理は家族に振る舞います。(もちろん私も食べますが)
皆いつも面白がって喜んでくれます。家族の中でも特に味にうるさい父に美味しいと言わせたら勝ちです。笑

美しいアート!!!芸術的な創作料理 BEST12

https://youtu.be/wFoNI18jI-0

美しいアート!!!芸術的な創作料理 BEST12
19,632 回視聴•2019/11/06
テイストメイド ジャパン チャンネル登録者数 56.9万人

確かに創作料理はアートですよね。「自分で作ったものを人に喜んでもらえること」という意味でYouTubeとは全てが”お料理番組”なのかも知れません。

まとめ

20代前半にしてすでにいろんな表現方法を手にしているまひこさん。丁寧な仕事ぶりから着実に活動を広げてゆかれるのだと思います。またぜひよろしくお願いいたします。

まひこさんへの音作りのご相談はこちら!

職人記事の一部 

この人のアニメにも職人の魂を感じました…

デズモンド・デニスさんも音作り職人。息子のタレント業で大ブレイク中

アンドリュー・ランドンさんは音にピュアでした…

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