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1 はじめに…
ドラマ化して大ヒットの漫画『孤独のグルメ』。
同じ作者のエッセイが『野武士のグルメ』です。
実は期待してなかったんですが
かなり面白かったです。
2 久住昌幸って誰?
「ガロ」出身の漫画家、
『孤独のグルメ』の作者です。
テレビ東京のドラマで好評の『孤独のグルメ』は
昨年中国版もリリースされ人気を博しています。
実はわたしは、2年前に台湾に行く前は
『孤独のグルメ』そのものをを知りませんでした。
台湾旅行から帰ってきて
あまりにも面白かった台湾旅行を振り返るため
ネットで台湾情報を渉猟していたところ、
ドラマ『孤独のグルメ・台湾出張編』に遭遇し、
その後漫画を知りました。
でも作者の久住昌之氏自身は
ガロの頃から知っており
なかななマニアックな作家さんだな〜と
陰ながら気にしておりました。
3 何が書いてあるの?
フツーの「まちの食堂」で一人で飯を喰う。
その時の心模様です。
なんで「野武士」なのか?
小心者の作者にとって、
「ハラが減ったからメシを喰う」理想の姿
=「野武士」なのだそうです。
ガラっと引き戸を開け、
ガシャっと刀を置き、
「オヤジ、飯だ」
「酒持って来い」
と怒鳴る。
この理想の姿「野武士」と
実際のギャップを綴ったものが
この『野武士のグルメ』なのです。
4 イチオシする理由!
『野武士のグルメ』は
期待せずに読むと、
かなりいい感じのエッセイです。
この「期待せずに読む」というのが
ポイント。
なぜならこの本自体、
食堂への愛・期待へのギャップそのもの
を愛する個人的グルメ体験記
だから。
人間は期待する動物です。
だから裏切られる。
でも、期待しないならしないで
それも裏切られる。
裏切られ続けることに臆さない。
むしろ裏切り続けられる現実そのものを愛し、愛でる。
その潔さが
作者の考えるところの「野武士」なんじゃないでしょうか?
ジタバタしない。
このあたりが、
読んでてすごくラク〜になる秘密でしょう。
忙しくてB級グルメにさえ行けない!
という人に特におすすめします。
5 では、三ヶ所ほど読んでみましょう
p.17
というわけで、野武士に憧れる。
そして野武士をイイ気分にさせる飯屋に憧れる。
…
カマスの干物を七輪で炙って、カブの味噌汁と丼飯を出すだけのような店。
そういう、野武士の似合う店に、入りたい。
そう思って、ボクは知らない街を、右往左往してしまうのだ。
純粋でストイックな求道者。
まさに、孤独な野武士の姿です。
そんな彼はグルメのミニマリストと言えるでしょう。
p.88
質素でおいしい旅館の朝ごはんに当たると、ジーンとくる。
ごはん。
焼きのり。
梅干し。
アジの干物の焼きたてのもの。
大根おろし。
ひじきと油揚げの煮物。
自家製タクワン。
わさび漬けあるいは塩辛少し。
暑い豆腐とネギの味噌汁。
異議なし。
トリュフ仕立ての何たかかんたらとか、
ウニソースのフランス風まるまるとか、
すごく虚しい。
高い=旨い、は幻想。
高い=旨い、と思わないと損をする
というヴェブレン効果でしょ。
だからわたしは
テレビの『ゴチになります!』とか大嫌い。
さて、ことさら印象が強かったのは
「風邪を引きそうなとときに食べるタンメン」の描写。
似非ミニマリストのわたしは
基本風邪は薬ではなく
生姜入鶏スープ、
もしくカレーで治す、
というポリシーでしたが、
この本を読んで以来、
「風邪を引きそうなときにタンメンをくらう」
ことを熱望しています。
でも、そう思った途端なかなか風邪を引かず、
さては心にインプトッされた
「野武士のタンメン」が作用し、
その効果で体温が上がって
ウィルスに効いているのではないかと…。
p.152
栄養のある、体があたたまる、水分のあるもの。
タンメンだ。
タンメン、と思いつた自分をエライと思った。
…
麺で野菜が見えない。
コショウをバンバンふりかける。
野菜をスープに浸すようにしてから取り上げ、ふうふう吹いて、
湯気をまき散らして口に入れる。熱い。でもウマイ。
塩味のスープの旨味がまとわりついたモヤシがうまい。
ああそうだ、この体はこれを求めていた。正解。大正解。
風邪を引いたら
早めのパxロンよりタンメンですね。
一方、ドラマで井之頭五郎役の松重豊氏は、
風邪引いたら、
山盛りのレバニラと、
餃子と大盛りライス、
喰っときゃ治るし。
松重豊 公式ブログ「修行が足りませぬ」 powered by ココログ: 新橋飯店
とおっしゃってます。
6 関連書など
なし。
『孤独のグルメ』(漫画)の中国語版が欲しいのですが、
未入手です。
7 最後に
漫画の絵や松重豊さんの演技の印象が強い
『孤独のグルメ』ですが、
この本を読むと作者の久住昌之氏が
卓越したエッセイストであることが分かります。
漫画とは違った味わいが楽しめますよ。
くれぐれも「期待しないで」「野武士の如く」
お楽しみください。