tokyocabinチャンネル:【朗読】L'éternité, A.Rimbaud「永遠」における、中原中也訳の凄味

   

日本語恐るべしというか…中原中也の恐ろしいまでの文才に寒気を感じました。こんな寒いのに困るんですが。BGM演奏は、クロちゃん。

【朗読】L'éternité, A.Rimbaud「永遠」中原中也訳, DiCaprio in Total Eclipse, narration by kyzz & Yuki Arahata

https://youtu.be/Tlp2NBJ5jR0

ランボーの偉大さはもちろんですが、中原中也の翻訳の色気と凄味に圧倒されます。

「永 遠」 中原中也 訳

また見付かった。
何がだ? 永遠。
去(い)ってしまった海のことさあ
太陽もろとも去(い)ってしまった。

見張番の魂よ、
白状しようぜ
空無な夜(よ)に就き
燃ゆる日に就き。

人間共の配慮から、
世間共通(せけんならし)の逆上(のぼせ)から、
おまえはさっさと手を切って
飛んでゆくべし……

もとより希望があるものか、
願いの条(すじ)があるものか
黙って黙って勘忍(かんにん)して……
苦痛なんざあ覚悟の前。

繻子(しゅす)の肌した深紅の燠(おき)よ、
それそのおまえと燃えていりゃあ
義務(つとめ)はすむというものだ
やれやれという暇もなく。

また見付かった。
何がだ? 永遠。
去(い)ってしまった海のことさあ
太陽もろとも去(い)ってしまった。

中原中也訳の恐ろしさ

そもそもフランス語の詩だし、ディカプリオのランボーにはかなわんよな~、と思ってたんですが、どうして! 中原中也の訳の日本語の巧みさには…そりゃ教科書に出てくる人だからだけど…とにかく凄味と色気が半端ねぇ!すくなくとも、この朗読において、中原中也はランボーを完全に食ってしまっていると思うのですが、いかがでしょうか。

それはこの難解な詩を見事に読み上げている荒幡さんの力量が大きいでしょう。静かに、しかし、冷たくはなく、後半の盛り上がりも、決して熱くなり過ぎず、まるでハロゲンランプのような光を放って、あくまで夜にとどまる朗読。

「苦痛なんざあ覚悟の前。」の狂ったかんじ、または狂った感じを演じてる、感じ。「繻子(しゅす)の肌した深紅の燠(おき)よ」のミステリアスさ。

しかし一番難しいのは最初と最後のセリフ。「去(い)ってしまった海のことさあ 太陽もろとも去(い)ってしまった。」あえて普通っぽい文章だけに、さりげなさを保ちつつも、ランボーの”視線”の彼方を想像させなければない朗読が要求されます。なにしろ「見付かった」のは「永遠。」なのですから! そんなやゆよーんなサーカスじみた芸当を、さらりとやってしまう荒幡さん、恐るべし…。

ほんと、正座して(という気持ちで)日本語勉強したいと思いました。
ありがとうございました。

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